30代ハゲの俺が不動産業でモテた話

女にモテる 金にモテる 不動産は欲望の金脈

シロブタ成り上がり列伝 その1

新大久保のパンツ屋編は、

オチのついたところで小休止にして新章突入。

今日から俺のキャリア形成について書きたいと思う。

 

俺の会社におけるキャリアは薄暗い10坪程度の部屋から始まった。

いま俺が働いているのは本社ビル5階の事務所だが、

入社時は地下ポンプ室横の小部屋に俺を含めた3人の社員と共に働いていた。

仕事の内容は超絶金持ちである創業者の事業パンフレット作成だ。

俺はイラストレーターとウェブの知識があったので運よく採用され、この職を得た。

昼になると、先輩らが机を占領するので、弁当を喰う場所も無く、汚水マンホールの上でメシを喰った。

 

当時の俺はまだ禿げていなかったし、デブでもなく、結構モテていた。

あのブスというか、横沢とも付き合う前で、もっと可愛いキャバ嬢と懇意にしていたのだ。

来る日も来る日もパンフレットのデザインを作り、時折内線で入る支配人の要求に全て答えて来た。当時の俺のあだ名は「ドラえもん」だった。

あんな夢こんな夢一杯叶えて来たのである。

良いパンフレットが出来ると、創業者は直に褒めてくれた。

その時、決まって言うセリフが「金を掌握する人間が全てを支配する」だった。

俺はその言葉に血肉が湧きたつほどの興奮を覚えたものだった。

 

それでも俺の評価は中々上がらなかった。

上階にはそれなりに勤続年数のある先輩らがいたので、やつらが権力のほとんどを独占していたからだ。

 

不遇の数年、、地下で働いていた同僚は次々と辞めて行った。

辞めていくヤツは、必ず会社の愚痴を吐いて辞めて行った。

「シロブタ君もこんな会社にいたら未来もないし、それに僕みたいに禿げるよ」と。

うるせーこのハゲと思ったが、本当に禿げた。

 

おっぺけぺー!!

 

俺はめげなかった。

たとえ、1人になろうともこの会社で成り上がってやると決心した。

そう思わせたのは、親友である軍曹の言葉だ。

”いつでも心にロックンロールを持て” と。

そう言ってやつは樽の様な腹にラーメンを流し込んだ。

 

俺の手持ちスキルとして僅かにあったウェブの知識をもとに、オフィス全体の社内SEとして君臨した。

他は情弱なやつらばかりだったので、圧倒するのにもそれほど時間はかからなかったのだ。オフィスソフト、ネットワーク、時には家のネット回線の相談まで。

 

俺は把握した。社内のネットワークを。

PCや重要データの入ったファイルサーバーも俺がいなければまともに運用できない。

 

社内インフラを掌握するのは最も権力に近づく近道だと知った。

なぜならインフラは、社長だろうがヒラだろうが全員が等しく使うモノだからだ。

そこには上も下もない。

 

例えば便所が壊れてクソが出来なかったら、

いくらシリコンバレーのエリートでも黙ってクソを漏らすしかないだろう?

その便所を直すのは、やつらよりも収入も社会的地位も低い職人達だ。

インフラとはそういうものなんだと学んだ。

 

知らない知識は事象で勉強した。

何かが起こる、何かを学ぶ、そして次の何かにそれを活かす。この繰り返しだ。

これを機に、俺を地下にいる”タダのハゲ予備軍”と軽んじていた同僚達からの株は、

グングン右肩上がりを続けた。

その時期に横沢と知り合った。思い出したくもないのでこの話はしない。

 

もう1つ大切にしていたことは、

地下にいても必ず上の仕事を手伝う。顔を売る。俺を忘れるなと。

仕事にこだわりをもたない。何でもやる。

 

そんなある日、俺の人生を変える出来事が起きた。

 

偉大な創業者が他界したのである。

 

つづく