新大久保のパンツ屋 その1
早朝の給湯室から悩ましい吐息が聞こえる。
ドアに聞き耳を立てると、チャイナの声だ。
どうやら香港で作った男どもを朝からWeChatで誘惑しているようだ。
モテる女はそれでいて大変なのかもしれん。
気付くと俺は自身の股間に手を触れていた。
さて、俺はヘアワックスをやめた。
これは俺の私見だがワックスの油は毛根の呼吸に良く無いようで、ベタついた髪は赤ちゃんにさえ毛髪量で負けることがある。そこで俺はヘアスプレーを使うことにした。ふんわりカールのババアが使うヤツだ。
慎重に髪型を整えていると、なつこが出社してきた。
「おはよう白豚くん。あれ!?毛髪増えてる?」
ブッサイクだなぁ。なぜこんなブスを彼女にしてしまったのか。
まぁ、俺もハゲてるから仕方ないか。
なつこを適当に相手していると、
重役出勤で遅れて来た支配人が現れた。
「白豚さん!あなたに頼みたいことがあるの!新大久保のパンツ屋!!あれ良い加減に出て行ってもらえないかしら!?」
俺の会社が一棟で所有している新大久保のビル(築50年)。
ここに入居しているパンツ屋の事だ。
このパンツ屋の女店主ヤッコ(椿鬼奴に似てる)には長年に渡って支配人が苦杯を飲まされて来た。
ヤッコはもう30年も同じビルでパンツ屋をやっている。他にテナントは4人いるが、全てヤッコの支配下であり、牢名主の様にヒエラルキーを築いてクソテナント達を支配している。
刈り上げ君となつこを何度も派遣して懐柔を試みたが、パンツの説明を受けるだけで何の成果も得られていない。本当に無能な奴らだ。
築古ということもあり、ヤッコ達テナントを立ち退かせて建て替えをしたいのであろう。
仕方ないなあ。俺は毎回こういう役割が多い。
支配人が揉め、刈り上げがかき乱し、なつこが放置する。
そして俺にお鉢が回ってくる。
通りで毛髪も減るわけだ。
俺はまず、ヤッコに会いに行くことから始めた。
続く