新大久保のパンツ屋 その2
新大久保にパンツ屋を構えるヤッコは食えない奴だ。
齢60近いババアで、30代の頃からパンツを売って生計を立てている。
これまであの手この手で我が社の管理の不備をつき、
賃料相場的にも3割以上は安い金額で入居を続けているのだ。
以前、強烈な要求に業を煮やした支配人が自ら乗り込み、ヤッコと対決した。結果は悲惨なもので、支配人は大敗を喫し、店に飾ってあるパンツの量が増えただけだった。
新大久保はやや久しぶりだ。相変わらず日中は何をしているのかわからない面々が街を往来し、夜になると異常な繁華性を見せる。
ヤッコの店は夕方にオープンするので俺は新宿角海老に寄りたい気持ちを抑えてまっしぐらに部屋に向かった。
エレベーター無しのボロビルを4階まで登ると、汚ねえ看板と店のドアが見えてきた。
店内に入るとパンツが所せましと並べられていて、パンツをかき分けてヤッコのいるレジカウンターまで進む。
ヤッコは俺を見るなり、「あらぁ」と声を出した。
どうやらまた整形したようで、目元が叶恭子になっていた。
「白豚さぁん、お久しぶり、パンツどう?」
「今日はパンツを買いに来たんじゃありません。滞納している電気代の徴収に来ました」
ヤッコは途端に目つきが変わり、「またなの!?いい加減にしなさいよ。この間払ったって刈り上げ君にも伝えたわよ!」
と怒鳴り始めた。
刈り上げや横沢ならこの時点で遁走するが、俺は違う。
だてに狭い便所で毎晩抜いているわけではない。
突っ張り棒の様に足を延ばしてしごくのだが、これが太ももの良いトレーニングになり、俺の足は大地から微動だにしないのだ。
「払ってくれるまで帰りませんよ!」
俺とヤッコは払え払わんの口論になった。
すると奴は携帯を取り出して、電話をかけ始めた。
「もしもしぃ、警察ですか?うちの店のお客が帰ってくれなくて営業妨害されてるの」
ヤッコは警察に通報したのだった。
俺はこれはヤバいと日ごろ鍛えた太ももで跳躍し、
非常階段を駆け下りてトンズラした。
全く、とんでもない奴だ。大家相手に警察を呼ぶとは。
ひどく疲れた俺は同業の鬼瓦に紹介してもらったマットヘルスで汗を流すことにした。
俺は頭髪も薄いが、体毛も更に薄い。
生まれたての子豚の様にほぼ産毛なのだ。
ケツを向けて嬢のサービスを受けていると、「本当にすべすべですねえ。」と喜ばれた。
得意げになってケツをもっと立ち上げると、急に嬢が大きな声を出した。
「やだ!!他の毛は薄いのに、アナルの毛が凄い!!」
とんでもない発言だ。耳を疑った。
俺は酷く傷つき、このまま屁をかましてやろうかと思った。
続く